2016年2月23日火曜日

2、相掛かり

前回は矢倉模様から棒銀を仕掛けてきたときの対策だったが、今回は相掛かりの時の棒銀対策について考える。相掛かり棒銀は非常に優秀な戦法で、最善を尽くして互角であることが特徴でプロ間でもよく指されている。

(初手より)▲26歩 △84歩 ▲25歩 △85歩 ▲78金 △32金 ▲48銀 △86歩 ▲同歩
△同飛 ▲87歩 △82飛 ▲76歩 △72銀 ▲68玉 △83銀(基本図)
(基本図)
△83銀と銀の進路が定まったところで、後手の棒銀が決定する。ちなみに、△84飛と棒銀の組み合わせは相性が良くない(△83銀と上がった時に▲66角と上がられる)。これも受けの形を知らなければ一瞬で攻めつぶされてしまう。
 
(基本図より)▲24歩 △同歩 ▲同飛 △23歩 ▲26飛 △84銀 ▲77角 
△85銀 ▲88銀(図1)
(図1)
図1が棒銀の受けの形だ。先手は後手から△86歩と合わされる前に▲26飛~▲77角~▲88銀の形を作っておけば棒銀につぶされることはない。つまり、飛車先の交換を保留しておいて△83銀とされた瞬間に飛車先を交換し▲26飛と引く、と覚えておけば棒銀につぶされることはない。また、これは後手番の時でも応用でき▲27銀を見て飛車先を交換して△84飛~△33角~△22銀の形を目指せばよい。

当然後手も△86歩と打ち、開戦してくる。

(図1より)△86歩 ▲75歩 △87歩成 ▲同銀 △86歩 ▲同銀 △同銀 ▲同飛(図2)
(図2)
△86歩に対し▲同歩は△同銀▲66角△87歩▲79銀△34歩(参考図-1)で先手苦戦。
▲75歩とつくのが正しい応手で86の地点に飛車、角、そして歩か銀の三枚の利きを集めて受ける。ちなみに第2図で最後、▲86同角と取るのは△95銀と打たれてしびれる(参考図ー2)。
図2までは必然の応酬だ。
(参考図ー1)
(参考図ー2)












(図2)△同飛 ▲同角 (★1)△26飛 ▲84飛 △29飛成 ▲39金 
△19竜 ▲81飛成(成功図)

(成功図)
▲84飛とされると歩切れの後手は飛車交換を防げない(△85銀は▲88飛と引いて▲66歩~▲67金~▲86歩を狙われると防げない)。そのため△86飛~△26飛と先手の角を狙って一手早く竜を作るが、冷静に▲39金から▲81飛成とすると玉形差が大きく先手勝勢。
ちなみに手順中の▲84飛では▲83飛、▲82飛が自然に見えるが、いずれも△72銀、△71金と一旦受けられて逆転する。

では、これでめでたく先手よしなのか、実はそうではない。

(★1)△34歩 ▲77角 △同角成 ▲同玉(これからの将棋)
(これからの将棋)
実は△26飛に代えて△34歩と角成りを狙う手がある。先ほどと同様に▲84飛とすると△99角成
▲81飛成△72銀▲91竜△89馬(失敗図-1)と進み後手勝ちになる。△99角成~△89馬で先手玉に迫るスピードが一気に上がり、かつ後手玉は△42玉~△33玉~△22玉の逃げ道が出来て安全になっている。
(失敗図-1)












よって一回角成を受ける必要があるのだが駒を使わず▲77桂や▲77金と受ける手は△89飛、△88飛が両取りとなる。また、▲88歩と受けるのは、今度こそ△26飛と打ち、成功図の局面まで進んだとき△28銀と遠巻きに攻めて後手優勢(失敗図-2)。後手は成功図に比べ角道が通りかつ玉の逃げ道が広がっている。
(失敗図ー2)












ちなみに、▲77角に代えて▲66銀も有力だ。一例としては△25飛▲84飛△29飛成▲39金
△19竜▲81飛成△76香▲77桂(難解)という展開が予想される。
以下、先手は▲74歩~▲45桂、後手は△27桂~△39桂成と攻めあってどうか。非常に難解な形勢だ。
(難解)
先手番としては図1からずっと後手が主導権を握ったまま進められ、しかも最後の局面が互角とあっては不満だろう。つまり、図1の局面はすでに先手が不満の展開といえる。
実は先手の飛車の歩の交換を保留する構想に問題があった。

(初手より)▲26歩 △84歩 ▲25歩 △85歩 ▲78金 △32金 ▲24歩 △同歩 
▲同飛 △23歩 ▲26飛 △72銀 ▲38銀 △34歩(対策1)
(対策1)
あっさりと飛車先の歩を交換し▲26飛と引いておいて後手の飛車先の歩を交換できないようにしながら駒組みするのが、一番の対策だと思う。△34歩に代えて△83銀ならそこで▲76歩とつき、▲77角と飛車先の歩を交換させないように駒組みする。角道を開けさせることさえできれば後手は原始棒銀出来ない、という考え方だ。

(初手より)▲26歩 △84歩 ▲25歩 △85歩 ▲78金 △32金 ▲24歩 △同歩 
▲同飛 △23歩 ▲28飛 △72銀 ▲38銀 △86歩 ▲同歩 △同飛 ▲87歩 △82飛
▲27銀(対策-2)
(対策ー2)
素朴だが最も明快な対策は自分が棒銀をすることだ。当然相手も同様に△83銀と上がってくれば一手早く敵陣を突破する先手が勝つ。そこで後手は1度受けなければならない。受けの形は△84飛~△33角~△22銀の形だが、△84飛と棒銀は相性が悪いため棒銀は仕掛けられなくなる。

原始棒銀対策


1、矢倉模様

(初手より)▲76歩 △84歩 ▲68銀 △34歩 ▲66歩 △85歩 ▲77銀 △72銀 ▲78金
△83銀(基本図)
(基本図)

上図が矢倉戦における原始棒銀のテーマ図。これが単純ながら先手が受け損なうと一瞬で決着がついてしまう恐ろしい戦法である。

(基本図より)▲58金 △84銀 ▲79角 △64歩 (図A)
(図A)

図1で後手の狙いが明確になった。後手は6筋の歩を突き捨てて、角道を通し8筋で銀を交換を狙いながら角をなる狙い2つを組み合わせてこうげきを仕掛けてくる。

実は結論を言うとすでに図Aは先手に適当な受けがない。

(図Aより)▲68角 △65歩 ▲同歩 △95銀 (★1)▲67金右 
△86歩 ▲同歩 △同銀 ▲同銀 △99角成(失敗図)
(失敗図)
こうなると銀と香の交換ではあるが、次の桂取りが受からない(77桂と逃げるのは86飛で銀がタダ)この局面は先手大苦戦だ。

ちなみに67金右のところで▲88銀として87の地点を受けようとしても

(★1より)▲88銀 △86歩 ▲同歩 △同銀 ▲87歩 △88角成 ▲同金 △87銀成(参考図)
(参考図)
とされ飛車先を突破され後手ペース。

では、基本図から図Aのあいだのどこが悪かったのか。実は58金と上がった手が自然に見えて悪手だった。

(基本図より)▲79角 △84銀 ▲68角 △64歩 ▲56歩 △65歩 ▲同歩 
△95銀 ▲55歩(図1)
(図1)
図1の最終手の▲55歩がいい手で原始棒銀に対する唯一の受けで、これで受かっている。
ちなみに後手が再三△65歩とつき捨ててから△95銀と出ているのは、すぐに△95銀と出ると即座に▲96歩と突かれて困る。
(図1より)△55同角 ▲58飛車 (★2)△86歩 ▲同歩 △同銀 ▲55飛
△77銀成 ▲同桂 △89飛成 ▲79銀 △99竜 ▲64歩(図2)
(図2)
一旦△55角とおびき出して▲58飛と回るのが好手順で、これに対し△44角と逃げるのは再度
▲55歩と打って角道を遮断しておいて先手十分(参考図-1)。また、▲79銀と打ったところで
▲79金と受けるのは△99竜▲64歩と進んだとき△67歩と打たれるのが気になる(参考図ー2)。
図2の最終手▲64歩も▲85飛~▲81飛成を狙った気が付きにくい好手である。後手も香車を取ったが、、、
(参考図-1)
(参考図ー2)
 (図2より)△54香 ▲同飛 △同歩 ▲63歩成(結果図)
(結果図)
飛車と角の交換になったが63のと金の威力が大きく先手優勢である。以下▲65桂と跳ね、▲53桂成や▲77角を見せながら戦えば先手の優位は揺るがないだろう。